施政方針

令和6年度の予算並びに組織改編の提案にあたり、市政経営に対する私の所信の一端と、その実現に向けた取組の概要を申し上げます。

本市を取りまく状況

さて、新しい年を迎えた元日早々、石川・能登半島を襲った大地震により大変貴重な多くの命が失われ、未だ多くの皆様が不自由な暮らしを余儀なくされています。亡くなられた方に心からご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。一日も早い復興に向け、本市としましても引き続き最大限の支援を行ってまいります。

改めまして、我々行政は市民の皆様の尊い命と財産を守り、安全・安心な暮らしを築くこと、このことこそが何よりの使命であると、強く実感いたしました。

本市は間もなく、昭和29年3月の市制施行から70年の時を迎えます。そして、「サッカーのまち」という固有の歩みも100年を迎えました。新年早々の藤枝順心高校の全国での栄冠は、この幕開けに華を添え、明るい気持ちと元気を与えてくれました。若い世代の努力と活躍は将来への希望そのものであります。

現在、急激な人口減少をはじめ、社会環境の変化や歪、長きに亘ったコロナ禍や、混迷極める世界情勢による社会経済の停滞など、まさに大きな過渡期にあると言え、これまでの延長線上では対応できない時代にあります。

したがって、この大きな節目に当たりましては、今まで築いてきたものの上に次の10年、さらに次の100年のあるべき姿を描き、新しい藤枝市を「拓く」。まさに「再出発」という意気込みで市政に臨んでまいります。

新たな総合戦略の実行

先般、国が公表した将来推計人口は大きな衝撃でありました。現実をしっかりと直視し、相当の危機感を持って自らこの荒波を乗り越えなければなりません。

そこで今月、魅力と活力、そして持続力ある藤枝市創生へと再出発するため、人口ビジョンと一対を成す総合戦略を刷新いたします。

今、市政において何よりも優先すべきことは、不安定で不確実な社会環境の中で地域経済を立て直し、成長を導くこと、そして、市民の皆様の安全・安心な暮らしを立て直し、希望を導くことであります。

令和6年度の戦略方針

そこで、令和6年度の方針として、大きく2つの柱を掲げました。

1つは、「人・モノを呼び込み成長を生み出す」こと、

そして、もう一つは、「市民の元気を育み、活動・交流を湧き起こす」こと、この2つであります。

1.「人・モノを呼び込み成長を生み出す」

まず、1つ目の「人・モノを呼び込み成長を生み出す」取組ですが、現在、コロナによる停滞から再び、本市への旺盛な民間投資が戻ってきております。こうした流れを確実かつ持続的なものにすべく、目指すビジョンを明確にした新たな成長戦略に着手してまいります。

本市は、オーガニックシティとしての安全で多種多様な農作物やこれに基づく生産活動、そして先駆的な健康予防施策や高度な医療、製薬関連企業の集積など、固有の「食と農」「健康・医療」の強みを有しておりますが、これらは今後、世界的に大きくマーケットが拡大する成長分野であります。

そこで、これら「食と農」「健康・医療」を結び付けた新たな商品やサービスを生み出す基幹的産業やビジネスを創出し、関連する企業の立地や人材の誘導、市内企業との連動などにより、地域産業のいわゆる“稼ぐ力”と市民所得の向上にもつなげてまいります。

また、これと連動した独自のスポーツ交流戦略、名付けて「藤枝シティ・トレセン構想」もスタートさせ、市内全域をフィールドに、国内外からサッカーをはじめ多様なスポーツ活動や交流を呼び込む、滞在型のまちづくりを進めてまいります。

こうした取組の舞台となるまちづくりも、市内各所で重点的に進めてまいります。

中心市街地では駅前地区の再開発により新たなランドマークとなる複合施設建設にいよいよ着手し、その先の民間開発が進む駅西地区、さらには水上地区の土地利用構想へと、新たな広域都心エリア形成を加速します。

また、もう一つの核となる藤枝旧市街地についても、歴史文化と暮らしの総合再生に本格的に着手するため、旧市街地活性化推進室を「課」に格上げし、専任体制で歴史的資源などを活かした拠点づくりを進めます。

さらに、官民連携での陶芸村づくりが着々と進む中山間地域でも、新たな魅力創出へ、専任の担当を配して朝比奈地区のまちづくり構想に着手していきます。

このような希望ある未来を築き、成長を生み出すのは、まさに「人」であります。

そこで、地域社会を担う“人づくり”の基盤となる藤枝市民大学では、新たに「リスキリングコース」を新設し、実践力のある人材を輩出してまいります。

また、これらのまちづくりに広く関係人口・交流人口を呼び込むため、民間専門人材を「観光交流統括監」として配置するなど、人材力をより高めてまいります。

2.「市民の元気を育み、活動・交流を湧き起こす」

次に、もう1つの柱である「市民の元気を育み、活動・交流を湧き起こす」取組です。コロナ禍が落ち着く中で目にする市民の皆様の笑顔は、市政の究極の目的とは何かを改めて気付かせてくれました。

誰一人取り残さず、健康で安心な暮らし、そして希望ある暮らしを叶えること、このことを改めて職員と思いを一つにし、特に守るべき子どもと高齢者の支援を一対のものとして重点的に進めてまいります。

次代を担う子どもたちは、市民共有の財産です。あらゆる面で子どもに優しく、健やかな成長を導くまちを市民の皆様とともに創るため、「こども基本条例」を制定するとともに、これを形にする「こども計画」を子どもや若者の声を聴きながら策定し、こども医療費の完全無償化など具体の取組を展開してまいります。また、安心で持続可能な保育環境づくりに向け、保育人材の育成や働きやすい環境づくりも重点的に進めてまいります。

現在、高齢社会の進展とともに、認知症の増加も大きな社会課題となっています。ご本人のみならず、そのご家族の安心な日常を守り支えていくため、県内に先駆けて「認知症条例」を制定し、市民の皆様とともに優しい環境づくりを進めてまいりたいと考えております。

また何より、活き活きとした活動、交流が生きがいを育むため、地域でタクシーを定期利用できる新たな移動支援サービスを開始するとともに、住み慣れた地域で、気心の知れた仲間と買い物や健康づくり、コミュニケーションが取れる居場所と生活支援の独自のモデルづくりも、産学官連携により確立してまいります。

さらに、地域での活動・交流の拠点づくりとして、広幡地区交流センターの再整備に着手するとともに、ご厚意により寄附をいただいた高洲地区の診療所跡の活用も地域の皆さんのご意向を伺いながら進めてまいります。

コロナ後の社会に向けては、何と言っても市民の皆様の元気と明るい営みこそが市政の基盤となります。改めて“市民目線”で寄り添い、一人一人の希望ある人生を拓く市政を進めてまいります。

4K施策の再構築

昨今、変化する社会構造や頻発化・激甚化する自然災害がもたらす複合的な課題は、我々の想定を超えるものとなっています。そこで、これまで鋭意進めてまいりました市民生活に直結する、いわゆる「4K施策」も、こうした環境の変化を捉えて今一度築き直し、より実効性を高めてまいります。

<健康>

健康・医療分野では、幅広く感染症や重度の合併症から命と健康を守るため、男性のHPVワクチン、そしておたふくかぜワクチンに対する助成をスタートします。また、本市独自の健康経営の柱である、心身ともに働きやすい職場環境づくりをさらに加速し、アドバイザーの派遣や男性の育児休暇取得の支援、また熱中症対策に係る助成など多面的に環境を整えてまいります。

市立総合病院においては、がんと救急の中核拠点としての機能拡充へ、より小さな病変検出ができる高精度MRIの導入や、急増する呼吸器疾患に対応する呼吸器センターの開設を進めるとともに、さらなる機能更新に向け施設整備基金を新設し、将来に備えてまいります。

<教育>

教育分野では、いわゆる幼保小の連携を進め、幼児期から児童期への学びの接続や教育相談など、教育と福祉双方の視点から早期に子どもと家庭にアプローチするため、教育部とこども未来応援局に教員を配置し、一体となって特別支援対策や不登校対策を進めてまいります。

また、教育の現場においても、新たに通級指導教室を中学校に、登校支援教室を小学校にそれぞれ展開し、誰一人取り残さない、埋もれさせない教育環境づくりをより強力に推し進めてまいります。

<環境>

環境分野では、地域の皆様のご理解のもと、志太広域事務組合のクリーンセンター建設が令和8年度の稼働に向けて順調に進んでおります。引き続き、管理者である私の責任の下、焼津市との協力により、着実に進めてまいります。

地球的規模の課題である温暖化対策に向けましては、中山間地域の多くを占める森林による温室効果ガスの吸収量を、J-クレジット制度を活用して市内企業と売買する、独自の地域循環モデルを官民一体となって確立するとともに、公共施設のLED化も加速し、ゼロカーボンシティを強力に推進してまいります。

<危機管理>

最後に、危機管理分野ですが、今般の能登半島地震では、孤立集落対策や災害レジリエンス、いわゆる回復力が大きな教訓となりました。そこで、地域との協力を深めて自主防災力をさらに高めるとともに、資機材等の調達に係る支援を大幅に拡充いたします。

また脅威となる水害対策につきましても、大規模盛土造成地の安全対策を徹底するとともに、逃げ遅れゼロを目指して、避難行動を確実にするためのマイ・タイムラインのデジタル化にも取り組みます。

さらに交通事故から子ども守るため、新たに5カ年計画で小学校周辺へのゾーン30の整備に取り組むほか、防犯まちづくりとして、警察や郵便局、新聞店などと連携し、地域を挙げた防犯見守り体制を確立するとともに、増加する宅配サービスの利用に対応した、宅配ボックスの設置に係る補助制度を新設し、安全・安心の徹底と併せ、いわゆる2024年問題における物流事業者の負担軽減にも寄与してまいります。

社会の構造や環境の変化は、暮らし方や働き方を大きく変え、それに伴うニーズや課題も多様化、複雑化しております。我々行政も発想を転換し、また政策分野を超えた新しいサービスを民間活力も取り入れながら生み出し、改めて“選ばれるまち”を築き上げてまいります。

安定と革新の行政経営

以上、新年度の重点的取組を述べましたが、これらを着実に実行し、確実に成果を出すため、市政経営につきましても、ゆるぎない安定性と、自ら切り拓く革新性、この両輪で進めてまいります。

まず、財政運営においては健全経営がより前進し、本年度末において臨時財政対策債を除く市債残高は、財政改革を断行した平成20年度から415億円の削減見込みとなり、一方で将来への投資財源となる基金残高は、事業毎の積み立てがさらに進んで188億円に達し、より強固で持続可能な財政基盤となっております。

そこで、令和6年度当初予算におきましては、安心できる毎日、そして希望の持てる将来に向けて、しっかりと市民の皆様の暮らしを支え、しっかりと成長の基盤を整えるため、初めて600億円を超える過去最大規模の積極的な予算編成を行いました。

一方で、今後さらに社会保障費や人件費の拡大が見込まれる中、未来への投資とのバランスある行財政運営を進めるため、より機動的な組織体制、多角的な人材育成、人材登用も進め、予算・組織・人事の三位一体で変化する社会状況に機敏に対応し、最大の成果を挙げるよう職員一丸となって取り組んでまいります。

幸せになるまちづくり

未だ不安定、不確実な世の中ではありますが、市制施行70周年、サッカーのまち100周年の大きな節目の時を、今を担う私たちが歴史の中での大きな転換点とし、新しい藤枝市創生の出発点にしなければなりません。

これまでの延長線上の行政から自ら脱け出し、新たな発想とチャレンジで希望ある未来を切り拓き、市民誰もが「幸せになるまち」づくりを加速してまいります。

議員の皆様、そして市民の皆様とこの思いを共有させていただき、引き続きご協力、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

以上、市政経営に対する所信の一端の説明とさせていただきます。

お問い合わせ

秘書課
〒426-8722 静岡県藤枝市岡出山1-11-1 藤枝市役所東館3階
電話:054-643-3162
ファックス:054-643-3604

メールでのお問い合わせはこちら

更新日:2024年02月19日