施政方針
はじめに
今日の国際社会に目を向けますと、国家間の政治的対立の長期化や、トランプ関税などによる世界経済の混迷、或いはエネルギー価格の変動など、不確実性の高い状況が続いております。加えて、気候変動の影響は年々顕在化し、自然災害への備えや持続可能な社会への転換は、世界共通の課題となっています。
国内に目を向けましても、急速な人口減少と少子高齢化の進行、物価高騰による企業活動や暮らしへの影響など、社会構造や経済の仕組みが大きく変化しており、まさに時代の転換期と言えます。
今年は昭和元年から起算して満100年という節目の年を迎えます。昭和という時代は、幾多の困難を乗り越えながら、先人たちが未来を見据え挑戦を重ねてきた時代でありました。
令和の時代に生きる私たちも、現在、再び大きな困難に直面しておりますが、この状況を切り拓いていくには、先人の志を胸に刻み、変化を恐れることなく、果敢に新たな一歩を踏み出す必要があります。
社会保障費や人件費などの増大もあり、自治体経営は厳しさを増していますが、この正念場をいかに乗り越えていくのか。今、自治体の真価と実力が問われています。
「現在の安心」と「未来への希望」。この二つを両立させることこそが、私に課せられた使命であります。
目先の対応に終始することなく、前例にとらわれない不断の改善と「選択と集中」を徹底し、将来を展望する市政経営を着実に進めてまいります。
大規模プロジェクトが結実する年
本年度は、これまで未来への投資として本市が長年にわたり積み重ねてきたプロジェクトが、いよいよ結実する年を迎えます。
4月には、ふじえだ陶芸村構想の中核拠点となる「道の駅ゆとりえせとや」がオープンします。この拠点をこれまでに無い革新的なアートを生み出す場として若い芸術家などを呼び込み、活発な交流や二地域居住、さらには移住・定住へとつなげて、地域に新たな活力を生み出してまいります。
一方、私が市長就任以来、最重要課題として全力で取り組んできた「クリーンセンター志太」が、本年7月からの試験運転を経て来年1月に本格稼働を迎えます。
これまで約20年にわたり、地元の皆様はもとより、現清掃工場のある高柳地区の皆様、関係者の皆様のご理解とご協力、そして多くの職員の尽力によって、この時を迎えることができました。この場をお借りして、改めて心より感謝を申し上げます。
本市の力を結集した象徴とも言えるこのクリーンセンターが、志太地域の環境行政を支える中核施設としての役割を十分に果たすよう、志太広域事務組合、焼津市と確実な運用を図るとともに、本市においても付帯施設となる道の駅を中心に、“食と農”を活かした周辺の新たなまちづくり、地域振興に取り組んでまいります。
第6次総合計画・後期計画のスタート
私はこれまでの市政経営にあたり、目の前の課題への対応にとどまるのではなく、10年先、20年先を見据えて未来を創る取組にも常に挑戦してまいりました。その羅針盤となるのが総合計画でありますが、本年は、市民の皆様とともに考え、つくり上げた第6次総合計画後期計画のスタートの年となります。
市民の暮らしをしっかりと守り抜き、目標とする「幸せになるまち」の実現へ、確かな一歩を踏み出してまいります。
このような中、これからのまちづくりに欠かせないのは、都市間競争に打ち勝つ「変化を恐れず挑戦する力」と「変化にしなやかに対応する力」であり、この考えのもと、令和8年度に向けては、3つの柱として、「まちの安心感」、「まちの競争力」、そして「まちの持続力」、この3つを高める取組を進めてまいります。
1.「まちの安心感」を高める
まず、1つ目の柱である「まちの安心感」を高める取組についてです。
誰もが快適・便利で、安全に暮らすことができるまちづくりを進めるため、「住んでよかった」と実感できる、何より安心につながる施策を展開してまいります。
近年、頻発化・激甚化する水害から市民の皆様の命と財産を守るため、危機管理センター内に「水防対策室」を新設し、平時における予防の強化とともに、災害発生時の中枢機能の一元化を図ります。また、最前線で対応いただく消防団が迅速に活動できるよう、新たに「土嚢ステーション」の設置を進めます。
防犯・安全対策では、本市の玄関口である藤枝駅前の健全な環境づくりを目的とした「客引き行為等の禁止に関する条例」について、新年度からの施行を目指します。
また、地球温暖化により今後も厳しさが増す夏場の暑さへの対応として、特に安全確保が必要な高齢者の予防啓発や対策物品の備えを充実させるとともに、酷暑の中でも外での作業が必要な農業者について、新たに空調服等の熱中症対策用品の購入を支援してまいります。
医療分野では、住み慣れた地域で安心して医療を受け続けられるよう、新年度、家庭医療センター「藤枝みんなのクリニック」と、24時間365日対応の「訪問看護ステーション」を一体的に開設し、高度医療を担う市立総合病院とともに総合的な医療体制を確立してまいります。
2.「まちの競争力」を高める
次に、2つ目の柱である「まちの競争力」を高める取組についてです。
本市が持つ地域資源や個性を最大限に活かし、いわゆるヒト・モノ・カネが集まり、新たな価値と持続的な成長を生み出す取組を進めてまいります。
現在、国が導入を予定する「ふるさと住民登録制度」を先導的に活用し、関係人口づくりを新たなステージへと発展させてまいります。首都圏等のアーティストやスタートアップなどをターゲットに、二地域居住を行い、中心市街地や中山間地域のまちづくりに関わる人材に、来訪や滞在の費用の支援などを行う独自の制度を新たに創設してまいります。
産業分野では、成長戦略として新産業の創造を目指す「藤枝HALEバレー構想」をさらに加速させるため、産業振興部内に専任組織となる「新産業ビジネス創造室」を新設し、経済界と一体的に取組を本格化させます。
企業立地の促進に向けては、引き続き内谷地区における産業用地の造成を進めるとともに、企業の投資意欲を確実に形にするため、改めて市内を俯瞰した開発適地の可能性調査を実施するとともに、新たに企業の土地利用計画策定への支援も開始します。
農業分野では、有機農業のさらなる普及に向け、新たに有機農業へ転換する農業者への支援を行うとともに、海外で需要が高まる茶の輸出拡大に向け、改植や栽培体系の転換などへの支援を強化してまいります。
このほか、都市の吸引力を高める上で重要なインフラとなる幹線道路の整備を計画的に進めるとともに、AIビジネスの拠点となる大正大学のインキュベーションセンターや、全国から注目される滞在型音楽制作スタジオなどが新たに誕生する中心市街地、旧市街地への民間投資の誘導を、戦略的に進めてまいります。
将来を見据えた土地利用や増加する耕作放棄地への対応は、市民の皆様の切実な課題であります。土地利用構想のもと、優良な農地の保全、活用を図りつつ、土地利用の弾力的な運用も進めてまいります。
3.「まちの持続力」を高める
次に、3つ目の柱である「まちの持続力」を高める取組についてです。
全ての世代が元気に、そして活き活きと活動し、学び、心豊かに暮らすことができる、持続可能な地域づくりを進めてまいります。
まちの持続的な発展の礎は、何よりも「人」であり、「人づくり」は未来への最も重要な投資であります。
市民の旺盛な学びへの意欲に応えるべく開校した藤枝市民大学は、早くも5年目を迎えます。これをさらに一段高いものへと発展させるため、その契機とする記念シンポジウムを開催するとともに、リカレント、リスキリングを再編して、さらに地域を担う人材育成の実効性を高め、“いつからでも学び、チャレンジできるまちづくり”を、より確かなものとしてまいります。
今後、ますます女性の活躍が期待される中、その土台となるのは何よりも健康です。働く女性を対象に、女性特有の健康課題に着目した「女性の健康講座」を開催し、健康経営の新たな柱として支援してまいります。
環境分野では、深刻化する竹林問題に対応するため、適切な維持管理と利活用に取り組む団体への支援制度を新たに創設し、良好な森林環境を持続的に創出してまいります。
教育分野では、いわゆる「小1ギャップ」の解消に向け、幼保こ小の連携を引き続き推進するとともに、子どもたちを見守り、接続を支援する「かけはしサポーター」を新たに小学校へ配置します。
また、AIが社会の様々な領域で変革をもたらす中、先進的にICT教育を進めてきた本市の次なるステージとして、新たに「AI教育」を柱に据えて取り組みます。大学や民間企業と連携し、教員の生成AIスキルの定着や授業への利活用手法などの共有を図る「生成AIチャレンジ事業」を新たに展開するとともに、デジタルを活用し児童生徒の心の様子を可視化する「こころの健康観察アプリ」を導入します。
引きこもりや不登校などにより支援が必要な子どもや若者に対しては、学習や就労を支援する居場所の拡充を進めるとともに、発達に課題のある子どもや、養育が不十分な子どもへの支援などにより、誰一人取り残すことなく、社会とのつながりを持ち続けられる取組を進めてまいります。
あわせて、国が進める「こども誰でも通園制度」への確実な対応に加え、ひとり親家庭における養育費の不払いを防ぐための新たな支援策を講じるなど、子育て支援をさらに充実いたします。
このほか、人手不足による夜間の交通空白の解消に向けた乗り合いタクシーの導入や、老朽化が進む上下水道管の維持管理へのAI活用など、まちの基盤が安定して機能し続ける環境づくりを一層加速させてまいります。
柔軟に対応できる行財政基盤の構築
さて本市の財政状況は、大規模事業の進展に加え、社会保障費や義務的経費の増嵩などにより財政需要が増加しており、今後数年間が極めて重要な局面となります。
このような状況の中にあっては、「量の拡大」から「質の向上」へ、そして「持続性の確保」へと、将来を見据えた構造的な転換が求められています。
今回の予算編成にあたっては、中期的な財政状況を睨み、予算の拡張を抑制しつつも重点的な取り組みを着実に実施することを基本とし、将来に向けて決して成長を止めることがないよう、職員とともに一丸となって知恵を出し合い、将来の藤枝の姿を思い描きながら丁寧な議論を重ねてまいりました。
事業立案においては、選択と集中の考えのもと、全事業総点検による事業効果の検証と見直しや、スクラップ・アンド・ビルドの徹底により、市民ニーズに的確に応える取組と将来の成長につながる投資に重点的に資源を配分する予算といたしました。
併せて、その中核となる組織についても、民間人材による専門的な知見や柔軟な発想を積極的に取り入れるとともに、機動力と実行力を兼ね備えたさらなる体制へと見直しを図ることで、変化の時代にあっても柔軟に対応できる行財政基盤の構築を進めてまいります。
とりわけ、やりがいと高い志を持って働く職員は市政を支えるかけがえのない財産であり、本市の未来を切り拓く中核的な力であります。市民サービスの向上と職員の働き方の改善の両面につながるDX化を継続して進めるとともに、多様な働き方の実現に加え、互いを尊重し支えあえる職場づくりにより、各職員の個性と能力が十分に発揮できる環境を整えてまいります。
おわりに
令和8年度は、第6次総合計画後期計画のスタートの年にあって、今後のまちづくりに弾みをつける重要な年になるものと考えております。
市民一人一人が“活躍”し、地域が“活発”に動き、そしてまち全体に“活力”がみなぎる。
このようなまちの実現に向けて、市民、事業者、そして行政が力を合わせ、「安心感」、「競争力」、「持続力」あるまちづくりを進めてまいります。
そして、その先頭に私が立ち、未来に向けて力強く歩みを進めることで、「幸せになるまち藤枝」を次の時代へ確かな形でつないでいく決意であります。
市民の皆様とこの思いを共有させていただき、引き続きご協力、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
以上、市政経営に対する私の所信の一端とさせていただきます。






更新日:2026年02月16日