施政方針
本市を取りまく状況
はじめに、今年は戦後80年の年にあたります。過去の教訓、そして先人たちの努力の上に、我が国、そして本市の平和な日常が築かれていることを改めて認識し、この平和を守り、次世代に未来への希望とともに引き継ぐ責任と使命感を持って、市政にあたってまいります。
さて本市は昨年、市制施行70周年、そしてサッカーのまちとしての歩みも100周年の大きな節目を迎えました。市民の皆様とともに絵描いた次の10年、100年へ、今年はいよいよ新たなスタートになります。
一方で、市民の皆様の暮らし、営みを取り巻く環境は人口減少の加速による社会構造の変化、混沌とする世界情勢や政治経済の動き、そして多発する自然災害など不確実性の霧に包まれ、極めて不安定な中にあります。
物価の高騰や円安の進行、人材不足等は市内産業の成長力を下押ししており、足元を見ますと、これらに加えて社会保障費や人件費等義務的経費の増大により、市政経営も大きな正念場にあります。
もはや、これまでの経営手法では自立し、持続できない時代です。今こそピンチをチャンスに変えるしなやかで大胆な発想、意識と行動の自己改革、そして“選択と集中”による戦略性をもって、現下の状況を切り拓き、市民の皆様の安心と、次の時代に希望をつなぐ道筋をつけてまいります。
第6次総合計画・前期計画の集大成
令和7年度は、第6次総合計画の、前期5カ年の最終年度となります。「幸せになるまち」に向けた一つの集大成、そして後期5カ年でのさらなるステップアップに繋げる施策を展開してまいります。
特に柱に据えるのは、「人」であります。社会全体が大きな転換期にある中で、今まさに大事なことは、人の活躍であると考えます。人はまさしく市民、そして将来の市民です。これを市政の中心に据えて、人に優しく、人を育み、人に選ばれるまちづくりを進めてまいります。
令和7年度の戦略方針
こうした上で、令和7年度に向けて、3つの取組方針を掲げました。
1つ目は、「誰もが安心できるまちづくり」、
2つ目は、「未来に向けて成長するまちづくり」、
そして3つ目は、「若者、女性が集まり、活躍できるまちづくり」、この3つであります。
1.「誰もが安心できるまちづくり」
市民の皆様の安心できる日常、営みこそが市政の基盤であります。したがいまして、市民の皆様の不安や心配事に寄り添った施策を展開してまいります。
高齢化が進展する中で、孤立や複合的な課題を抱えるケースが増しております。そこで、地域包括ケア推進課内に「包括サポート係」を新設し、高齢者課題の困難ケースに一元的に対応する支援体制を確立します。
また、障害や発達に課題を抱えるこどもや若者を支え、自立や社会参加に繋げられるよう、障害児通所支援のワンストップ窓口をこども家庭センター内に整えます。
学びの場では、本年度、青島小、高洲小に設置した登校支援教室を、新年度は新たに藤枝、葉梨、広幡、朝比奈第一の各小学校に展開してまいります。
遊びの場では、駅南公園にインクルーシブ遊具を初めて導入し、地域においても、高洲地区にこども食堂や多世代と触れ合うコミュニティ拠点を整備するなど、全てのこどもに優しいまちづくりを推進します。
さらに、障害のある方が福祉施設に通うための交通費の支援や、生活に困窮する方の地域での居場所づくりにも新規に取り組むなど、様々な境遇にあっても、それぞれの場所で安心して活躍できる環境を、きめ細かに整えてまいります。
2.「未来に向けて成長するまちづくり」
これは、次の世代に向けての責任でもあります。
大きく変化する時代の中でも、未来を切り拓く攻めの姿勢で変革に挑み、新たな価値と成長を生み出してまいります。
未来への活力となるのは、まさしく地域産業の力であります。そこで、静岡県とも連携し、本市の強みである「食と健康」の領域で、地域産業を牽引するビジネス創造に具体に着手してまいります。特に構想に弾みをつけるべく、新たな商品やサービスの開発を行う先導的プロジェクトに対する補助制度を新年度創設します。
また、将来的に関連する企業を呼び込む拠点の形成に向け、都市政策課内に「都市拠点整備係」を新設して取組を加速するとともに、岡部町内谷地区の産業用地の整備を着実に進めます。
さらに、本市の貴重な産業資源であるオーガニックを「食と農」のまちづくりの核として成長させるため、新たに「オーガニックのまち推進室」を創設し、生産と産地ブランドの確立から、出口戦略となる消費と販路の確保までの包括的な体制づくりを行ってまいります。
3.「若者、女性が集まり活躍できるまちづくり」
藤枝順心高校の史上初の3連覇は、感動と前に向かう勇気を与えてくれました。若者、女性の活躍はまさに未来の希望そのものであり、その発想力、行動力こそが、本市の成長の原動力になります。
そこで、若者や女性が活躍し、自己実現できる多彩なフィールドづくり、そして、その基盤となる生活環境づくりを両輪で進めてまいります。
ミュージシャンの後藤正文さんが本市にもたらしてくれた「音楽のまち」としての新しい価値は、将来に向け限りない可能性を有しています。そこで、後藤さんが本市で立ち上げたNPOと連携し、次代の若手音楽家を育成・支援する取組をスタートします。そして、こうした動きをさらに旧市街地のまちづくりに展開するため、企業や団体等と連携し、歴史ある資源に新たな息吹を注ぐ拠点づくりにも着手してまいります。
新しいチャレンジを重ねる本市には、今、多くのスタートアップや人材が集まってきています。この流れを加速するため、駅前地区で整備を進める2つの再開発複合ビルに、包括連携協定を結ぶ大正大学が開設する情報科学部の一拠点となる、ビジネス創造の「インキュベーションセンター」を連携して設置するほか、若者、女性が集まる交流施設等の誘致を進めてまいります。
また、中山間地域では、いよいよ完成する陶芸村構想の拠点施設を核に、国内外から多彩なアーティスト活動を呼び込む創造的な地域づくりもスタートします。
一方で、若者、女性の活躍には、まずは安心できる生活環境と経済基盤が必要です。
そこで、Uターンして地元企業で活躍する若者への奨励金の給付を新たに始めるとともに、妊婦の出産準備を支える新たな支援給付や包括相談の開始、子育てファミリーの住宅取得に係る支援の拡充など、出産や育児、住まいの希望が叶う環境も一体的に整えてまいります。
繰り返しになりますが、今述べた3つの取組方針のベースになるのは、全て「人」であります。人が最も輝くまちづくり、人の幸せに溢れるまちづくりを、未来への強い決意をもって取り組んでまいります。
4K重点施策の価値向上
こうした重点的な取組とともに、私の市政の基礎となっている、市民の皆様の日々の安全・安心な暮らしに直結する、いわゆる4つのKの重点施策も、時代の変化に合わせながら、より価値を高めてまいります。
<健康>
まず健康・医療分野では、こどもの健やかな成長に向け、より早くから発育状況や先天性の病気の早期発見に繋げる1か月児健診を導入するほか、幅広く感染症から命と健康を守るため、新型コロナウイルス、破傷風等を予防する、いわゆる五種混合に加え、増加する帯状疱疹の定期予防接種をスタートします。
また昨今の災害級の暑さからこどもや高齢者の命を守るため、小中学校の体育館へのエアコン設置を進めるとともに、住民税非課税世帯のエアコン購入に係る支援も始めるなど、熱中症対策を強化してまいります。
市立総合病院においては、初期診断から在宅医療までを一貫して行う「家庭医療センター」の開設に向け、体制づくりとして「総合診療科」を新設するとともに、訪問看護ステーションも兼ねた拠点の整備を進めます。
また、志太榛原二次医療圏唯一の「地域がん診療連携拠点病院」としてより高度な医療を提供するため、内視鏡センター、化学療法センターを副院長直轄に再構築し、より機動的な体制を整えます。
<教育>
次に教育分野では、幼児教育から学校教育への移行期、いわゆる「架け橋期」のこどもに安心感を与えて円滑な接続を行うため、幼保こ小連携のカリキュラム導入を始めるとともに、ICTを活用した教育をさらに前進させ、児童生徒の知識欲をより高めるため、学校のICT環境を全面的に刷新いたします。
また、全てのこどもが公平に夢に向かってチャレンジできるよう、経済的な支援が必要なご家庭の大学受験等の費用のサポートをスタートします。
持続可能な社会教育モデルとしてグッドデザイン賞を受賞した藤枝市民大学では、変革が求められる地域経済を担う人材づくりを確実に進めるよう、リカレント、リスキリングコースを再編し、より実践力のある教育メニューと、企業とのマッチングの場を構築します。
<環境>
次に環境分野ですが、新たなクリーンセンターの建設が、地域の皆様のご理解のもと令和8年度の稼働に向けて順調に進んでおります。引き続き焼津市、事業者の志太広域事務組合と協力し、着実に進めてまいります。
また地球温暖化対策として、政府が目指す2050年のカーボンニュートラルに自治体として積極的に貢献するため、運動公園や学校の校舎など公共施設のLED化を順次進めるとともに、中山間地域の森林資源を活かした本市独自のカーボンクレジットを、地元エネルギー会社や森林組合等と連携しながら推進してまいります。
<危機管理>
最後に危機管理分野ですが、昨今の脅威を増す豪雨災害への新たな対策として、雨水の河川への流入を抑制するため、住宅の雨水貯留浸透施設の設置に対する補助を開始します。
また、度重なる南海トラフ地震臨時情報の発令により備えへの意識が高まる中、住宅の耐震改修や自主防災会の資機材等の整備に係る支援も充実します。
さらに、地域における消防活動や災害対応の維持・強化に向け、地域防災課内に「地域消防担当」を配置し、担い手の減少が課題となる消防団員の確保とともに、消防団活動を活性化してまいります。
市民の皆様が日々安全・安心に健康に暮らし、将来に希望が持てるまちを創るためには、時代は変化しようとも、この4つのKの重点施策はその基礎として、より充実させていく必要があります。
常に先を見ながら、また国や県の施策とも連携しながら、その時々で最良のサービスが提供できるよう、市民目線で再構築してまいります。
変革と成長を生み出す行政経営
以上、令和7年度の市政経営に対する私の基本的方針を述べましたが、最初に申し上げたように、今後社会保障費や義務的経費が増大し、財政運営は極めて厳しい局面に入ります。こうした中でも、これらの重点的取組を形にし、確実に成果を出せるよう、創意工夫のもと、まずは確固たる安定性の確保の上に、“変革と成長”の強い意識のもと取り組んでまいります。
まず財政運営ですが、今後大規模事業が続く中でも、臨時財政対策債を除く市債残高は適正管理を行い、目標とする500億円以下を維持させながら、一方で各種基金の残高は170億円を超える額を確保しており、将来へのさらなる飛躍に向けて、安定的で持続可能な財政基盤が整っております。
そこで、令和7年度当初予算におきましては、真に市民の皆様に求められるサービス、そして本市の未来を築く施策を確立し、着実に推進するため、昨年度を大きく上回り、過去最大規模となる666億円を超える積極的な予算編成を行いました。
一方で、職員を挙げて全ての事業や執行体制の総点検を行い、“選択と集中”のもと徹底した事業のスクラップ・アンド・ビルドを行うとともに、組織編成においては初めてスリム化に着手し、より実効性と機動性のある体制に転換してまいります。
併せて、「人」、即ち職員を大切に、職員が働きがいを抱き、心身ともに健康で安心して働き続けられる環境づくり、そして希望ある未来を担う人づくりも進め、大きく変化する社会環境にしなやかに対応し、最大の成果を挙げるよう、一丸となって取り組んでまいります。
「幸せ」が叶うまちづくり
最後になりますが、社会全体に閉塞感が漂うのは、現在の不安定さも然ることながら、将来の可能性が見通せないことにあると考えます。
本市が元気に、明るく、次の10年、100年へ新たな歩みを始めるためには、しっかりと希望溢れる未来を示し、誰もが個性と能力を発揮して可能性を開花できる環境を築くことが、何よりも今、必要であります。
職員とともに常に現在の状況、そして未来のビジョンを確認し、自己改革を繰り返しながら果敢にチャレンジして、「幸せ」が叶うまちづくりを加速してまいります。
市民の皆様とこの思いを共有させていただき、引き続きご協力、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
以上、市政経営に対する所信の一端の説明とさせていただきます。
更新日:2025年02月17日