施政方針
令和5年度の予算並びに組織改編の提案にあたり、市政経営に対する私の所信の一端と、その実現に向けた取組の概要を申し上げます。
本市を取りまく状況
はじめに、本市は来年、市制施行70周年を迎えますが、これに重ねて、歴史と伝統を積み上げてきたサッカーのまちとしての歩みも100年を迎えます。この記念すべき年に向けて、藤枝MYFCのJ2リーグ参入、そして藤枝順心高校の全国制覇はまち全体に元気を与え、「蹴球都市ふじえだ」の未来へ、希望の持てる大きな一歩となりました。
現在、終わりの見えないコロナ禍に加え、緊張感が続く世界情勢と、これらによるエネルギー価格や物価の高騰、そして繰り返す自然災害の猛威などが我々の暮らしを脅かし、極めて不安定な社会環境にあります。
市民の皆様は大変不安で、心の痛む毎日を送られていることと思いますが、私は、こうした時にこそ大切なことは、今申し上げた「元気」、すなわち、活動の源となる「心」が整う環境であると考えます。
市民の皆様が一日も早く安心できる日常を取り戻し、心穏やかに暮らすことができるよう、議員の皆様、地域の皆様、そして医療従事者の皆様とともに、社会経済の復興に向け、全力で取り組んでまいります。
力強い経済の再生へ
さて、ウイズコロナが浸透し、社会経済の動きも漸く回復の兆しがあったのも束の間、再び原材料価格の上昇や為替変動の影響により、特に地方経済は大変厳しい環境にあります。
政府は、令和5年度の経済成長率を1.5%と見込んでいますが、県内に限っては景気の見通しはマイナスに転じる見込みであり、本市におきましても、市税収入は0.9%の増と大きな伸びは難しいものと予測しており、本市の原動力となる企業活動をしっかりと支えていく必要があります。
一方で、明るい兆しもあります。昨年、藤枝駅前に官民連携で開設したビジネス拠点「未来共創ラボ・フジキチ」には、現在、60社を超える首都圏や市内の企業、人材が集まり、新たな時代のビジネスを生み出す協働が動き始めています。力強く持続可能な地域経済へ、こうした取組も全力で後押ししてまいります。
現在を一言で表すなら、“変革と不確実性の時代”と言えます。まさに我々行政の力が試されるときであり、今こそ希望ある未来を築くときです。
“幸せになるまち”を掲げる第6次総合計画も、令和5年度はいよいよ前期計画の折り返しとなります。
「身心安楽(しんじんあんらく)」、すなわち、市民の皆様が健康で安心して暮らすことができ、将来に希望の持てるまちづくりを、職員とともに心を一つに、さらに前進させてまいります。
令和5年度の戦略方針
さて、現下の不安定で厳しい環境に立ち向かい、希望あふれる未来へと前進すべく、令和5年度の戦略方針として、大きく2つの柱を掲げました。
1つは、「未来への成長基盤づくり」
そして、もう一つは、「次代を担う人づくり」
この2本柱であります。
1.「未来への成長基盤づくり」
まず、1つ目の「未来への成長基盤づくり」ですが、官民挙げた技術革新による分散型社会への転換は、真の創生を実現するチャンスの時であり、本市固有の資源を活かした先駆的な取組を一気呵成に進めてまいります。
まずはコンパクト・プラス・ネットワークのまちづくりのハブとなる中心市街地ですが、全国でも片手の自治体しか辿り着けていない第4期活性化計画が、間もなく政府から認定される見込みとなりました。本市の勢いを示す駅前地区の再開発は、いよいよ駅前一丁目9街区が事業に着手し、一丁目6街区もこれに続き、都市計画手続に入ります。本市の新たなランドマークとなるツインタワーがここ数年の間に姿を表し、駅前地区の景観は、広域都心の玄関口として大きく姿を変えていきます。
もう一つの核となる藤枝地区の旧市街地も、専任の「旧市街地活性化推進室」を新設し、暮らしと歴史文化の総合再生に本格的に着手します。
中山間地域でも、新たなまちを創る「陶芸村構想」が具体的に動き出します。拠点となる新陶芸センターや道の駅の複合施設の整備に呼応し、民間による滞在型観光拠点の計画も生まれてまいりました。
コロナ禍にあっても歩みを止めず、まちづくりを進める本市には、大変ありがたいことに民間投資も続々と生まれております。こうした動きを力にしながら、多彩な魅力と活力を放つ拠点づくりをさらに進めてまいります。
先日、瀬戸谷の人と農・自然をつなぐ会が進める「有機の郷構想」が、実に競争率23倍の狭き門を突破し、農林水産業みらい基金の採択を受けました。こうした推進力も得ながら、本市農業の未来に向けた成長戦略として、県内で初めて宣言したオーガニックビレッジを、産学官連携により着実に確立してまいります。
さらに、スタートアップなど革新的企業を呼び込み、市内企業とともにデジタル、グリーン社会への変革を進めるため、新たなビジネス支援の仕組みを構築し、次世代の基幹産業の芽づくりにも着手するなど、人の動きが生まれ、新たなビジネス、交流が沸き上がるまちづくりを強力に進めてまいります。
2.「次代を担う人づくり」
次に、「次代を担う人づくり」です。今を生きる私たちには、次代を担う子どもたちを大切に守り育て、希望が持てる未来を築き、バトンを渡していく責務があります。そこで新年度、「こども・子育て支援」を市政の大きな柱に据え、さらなる重点化を図ります。
この春、「こども家庭庁」が新設されますが、本市ではこうした動きに先駆け、国が実現できなかった教育と子ども政策の一元化を進めてまいりました。新年度には、さらなる体制強化に向け、妊産婦から子育て家庭、そして子どもの包括的な支援を行う「藤枝市こども家庭センター」を新たに開設いたします。
その中核として児童課を「こども課」に再編し、子どもの尊厳を守り、健やかな成長を支える、独自の「こども基本条例」の制定を目指すとともに、安全・安心な保育環境づくりを進めるため、保育施設の監督や支援、また人づくりを統括する担当課長を新たに配置します。
また、発達支援や食育の拠点機能も有する、新しい岡部みわ保育園の建設にも着手してまいります。
さらに、多子世帯の保育料軽減や子育て世帯の家事支援、また三世代同居や近居に係る支援拡充などを行うことで、若い世代の育児や経済面での負担軽減を図り、安心して子どもを産み育てられる環境づくりも進めます。
本年度、“いつからでも学び、チャレンジできるまち”に向け、藤枝市民大学を開学いたしました。多彩な学びの提供と多世代の学びへの参加は、文部科学省からも今後の社会教育のモデルであると評価をいただきましたが、新年度はいよいよ通年での本格スタートを切ります。
特に地域経済を担う“人への投資”を進めるため、資格取得コースを大幅に拡充するとともに、新たに「合格報奨金制度」を導入し、次へと踏み出すチャレンジを後押ししてまいります。
先般スタートした「日本一働きやすい職場環境づくり」も前進させます。男性の育児休暇取得や従業員の働く環境づくりを進める企業を認定しサポートする制度を創設し、取組を広げてまいります。さらに、障害者のキャリアアップに対する支援、また高齢社会の支えとなる介護人材づくりの支援も新たに制度を確立し、共生社会の実現と多様な人材の活躍を進めてまいります。
守り高める4つのK
これらの戦略的取組の基礎となり、また市民の皆様の日々の暮らしの基盤となる、「守り高める4つのK」も、さらに充実させてまいります。
<健康>
まず、健康分野では、何より大切な市民の皆様の健康・予防をより強化するため、コロナウイルス対策課を再編して「感染症対策課」を新設し、あらゆる感染症への対応や、帯状疱疹、子宮頸がんなど各種予防接種を一元的に進めてまいります。
また、市立総合病院においては、がん診療と救命医療の中核拠点としてさらに高度化を図るため、新たに患者負担の少ない血管内治療を担う「IVRセンター」を開設するとともに、「脳卒中センター」を拡充いたします。また、患者や家族に寄り添い支える環境づくりとして、一元的な医療相談窓口となる「患者相談室」の新設や、緩和ケア病棟の整備も進めてまいります。
<教育>
教育分野では、地域色豊かな小中一貫教育をさらに前進させるとともに、各学校での登校支援、また発達支援に引き続き手厚く対応してまいります。
また、部活動の地域移行については、新年度、試行的に野球などの数種目をエリア別に合同で実施し、検証を行いながら段階的に地域への移行を進めてまいります。
健やかな心と体を育む学校給食ですが、地場産物の利用拡大、安定供給に向け生産者とのつなぎ役となる「地産地消コーディネーター」を新たに配置するとともに、新給食センターの建設に向け、用地の取得や実施設計を進めてまいります。
<環境>
環境分野では、地域の皆様のご理解のもと準備を進めてきたクリーンセンターが、造成工事に続き、いよいよ建築工事に着手します。令和8年度の稼働に向け、志太広域事務組合とともに着実に進めてまいります。
「ゼロカーボンシティ」を推進し、脱炭素社会、循環型社会に向けた行動も進めます。全市的な温室効果ガス排出削減に向けて、新たに住宅の省エネ改修を支援する制度を創設するとともに、我々行政も率先し、公共施設のLED化を集中的に進めてまいります。
また、引き続き本市独自の生ごみの資源化によるバイオマス発電を前進させ、再生可能エネルギーの活用も進めてまいります。
<危機管理>
最後に、危機管理分野におきましては、昨年本市にも甚大な被害をもたらした台風や集中豪雨への対策をさらに強化するとともに、情報伝達や避難行動の在り方を再構築してまいります。特に要支援者の安全を確実に守るため、個別避難計画の策定を重点的に進めます。
また、原子力災害における広域避難につきましても、実効性の確保に向け、来月、計画に基づく避難訓練を初めて開催いたします。
交通安全日本一に向けましては、自転車のヘルメット着用が努力義務化されますが、転倒事故の多い高校生や高齢者など、被害を最小限に抑えて命を守るため、独自の自転車ヘルメットの購入支援をスタートします。
また、損害保険会社の有するビッグデータからAI、いわゆる人工知能で通学路などの危険個所を導き出し、事故防止につなげる取組も進めてまいります。
こうした取組に加えまして、現在、高齢化も進展しておりますが、今や人生100年時代。歳を重ねながらもいつまでも生きがいを抱き、地域と関わりながら暮らし活躍できるよう、移動支援やデジタル支援など、安心・便利な環境づくりもより充実させてまいります。
引き続き市民の皆様に寄り添い、誰一人取り残されず、またそれぞれの世代の希望が叶う、誰もが“幸せ”を実感できるまちづくりを進めてまいります。
将来を見据えた予算と組織
以上、新年度の重点的取組を述べましたが、これらを実行するための基礎となる市政運営につきましても、次の10年の経営方針である第2次新公共経営大綱に基づき、安定と革新、両面で着実に進めてまいります。
まず財政面では、健全経営がより進み、臨時財政対策債を除く市債残高は、財政改革に着手した平成20年度から398億円の削減見込みが立ちました。また、投資財源となる基金残高は、事業毎の積み立てが確実に進んで172億円に達し、力強く、持続可能な財政基盤となっております。
令和5年度当初予算におきましては、未だ混沌とする社会情勢の中で難しい舵取りが続きますが、まずは何より、市民の皆様の暮らしをしっかりと支えてこの難局を乗り切り、そして希望を築くための未来への投資として、特定財源の確保などにより、過去最大規模の積極的な予算編成を行いました。
執行に当たりましては、常に先を見て社会状況に機敏に対応しながら、最大の成果を挙げるよう職員一丸となって取り組んでまいります。
組織マネジメントにおきましても、先に述べたとおり、戦略方針の2つの柱を着実に実行する機動的な組織体制へと転換するとともに、必要な人員の確保と適材適所の人事配置を進めます。また、新たに民間専門人材の登用を多分野で進め、ノウハウを得ながら施策の革新と顧客志向型のサービス提供をさらに進めてまいります。
健康・安全・希望が叶うまちづくり
この3年間、我々の暮らしを脅かし、社会環境を一変させた新型コロナは、5月8日に5類への移行が決まりましたが、変化したモノの在り方や価値観は元に戻ることなく、さらに変革を続けるものと考えます。
これに加え、少子高齢化による社会構造の変化、揺らぐ国際秩序と経済リスク、さらには気候変動など、社会全体はまさに大きな転換期にあります。
こうした中で迎える令和5年度は、市民の皆様の健康と命、暮らしと営みを守り抜き、希望ある未来への道を切り拓く、極めて重要な年になります。
まもなく訪れる市制施行70周年、そしてサッカーの歩み100年の時が、歴史の中で、輝く未来を築いた本市の新たな創生の時となりますよう、私の持てる力を全て注ぎ込み、職員とともにこの重要な一年、“健康・安全・希望が叶うまちづくり”を進めてまいります。
議員の皆様、そして市民の皆様とこの思いを共有させていただき、引き続きご協力、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
以上、市政経営に対する所信の一端の説明とさせていただきます。
更新日:2023年02月20日