枝っ子作家 小川国夫
小川国夫 (作家) 〈1927-2008〉
小川国夫は、昭和2年(1927)、志太郡藤枝町長楽寺(現・本町1丁目)で生まれ、青島小学校から旧制志太中(現・藤枝東高校)に進学し、病弱だった少年期に文学や絵画に親しみ、キリスト教にふれました。旧制静岡高校(現・静岡大学)時代にカトリックに入信し、20歳のころ小説を書き始め、東京大学国文科在学中の昭和28年(1953)、パリに私費留学し、3年間をフランスで過ごしました。この間にオートバイでヨーロッパ各地を旅行し、旅での体験から「アポロンの島」など、数々の小説が生まれました。そして、昭和40年(1965)、自費出版した私家版『アポロンの島』が島尾敏雄に激賞され、作家として注目を集めるようになりました。
著作には『或る聖書』、『試みの岸』、『彼の故郷』などがあり、簡潔な文体で光と影の原初的光景の中に人間の行為を映し出した作品を発表し、内向の世代を代表する作家と見なされています。
昭和61年(1986)、「逸民」で第13回川端康成文学賞を、平成6年(1994)には『悲しみの港』で伊藤整文学賞受賞、平成11年(1999)『ハシッシ・ギャング』で読売文学賞小説賞を受賞し、平成12年(2000)日本芸術院賞受賞しています。平成17年(2005)には、芸術上の功績顕著な芸術家を優遇する、国の栄誉機関である日本芸術院の会員となりました。
藤枝生まれ、藤枝育ちで、自らを「枝っ子」(えだっこ)と呼んだ小川国夫は、平成20年4月8日、80歳の生涯を閉じるまで、ふるさと藤枝で執筆活動を続けました。
小川国夫の直筆原稿『アポロンの島』(文学館蔵)
小川国夫著、私家版「アポロンの島」(文学館蔵)
更新日:2018年10月08日