椀貸せの松


清水さんへ上がる途中に、大きな枝ぶりの良い一本の松の木が生えていました。この木の下には白い髭を生やしたおじいさんがいて、嫁入りや法事などで一度にたくさんのお膳やお椀が必要なとき、村人たちがこのおじいさんに頼んでおくと、次の朝には約束どおりお膳とお椀が木の下にちゃんとそろえてありました。使ったあとのお膳とお椀は、きれいに洗ってまた元の木の下に返すのですが、ある時、悪い心の村人がいて、借りたお膳とお椀をこっそり自分のものにしてしまい、とうとう返しませんでした。それからはおじいさんの姿もみえなくなって、お膳もお椀も貸してくれなくなり、ついには大きな松の木も枯れてしまったといわれています。
更新日:2018年10月08日