○藤枝市地域経済を支える「がんばる中小企業」振興基本条例

平成28年12月26日

条例第36号

温暖な気候や水資源など豊かな自然環境に恵まれた藤枝市は、山間部と平野部をつなぐ物流及び交易の結節点として、また街道を往来する多くの人々に物資やサービスを提供する東海道の宿場町として、周囲との和を尊び、新しい文化や人々を受け入れながら発展を遂げてきた。専門的な知識や技術を有した多様な職業の人が集住し、茶や桐などをめぐる様々な業種により地域産業が成り立ってきた系譜が、多様な業種が集積する今日の産業構造にも脈々と息づいている。

市内に立地する事業所の大多数が中小企業であり、とりわけその多くは小規模企業である。本市の産業と経済の発展は、これら中小企業により下支えされており、中小企業は雇用機会の創出や消費行動などの経済活動以外においても、まちづくりや災害対応などにおいて地域社会に貢献するなど、市民生活の向上と本市の発展に果たすその役割は非常に大きい。

本市の産業には、大規模な資本を有する特定の企業との受発注関係ばかりに依存しない、景気や経済の情勢の変化に柔軟に応じられるという特徴があるものの、少子高齢化、人口減少などの社会構造の変化や経済の国際化による企業間の競争の激化など、刻々と変化する時代の潮流への的確な対応が求められる今日にあっては、中小企業が成長する環境、そして将来にわたって活力が維持できる環境を創出していく必要がある。

中小企業の元気と活躍こそが地域経済、地域社会に躍動をもたらす原動力であるとの共通認識のもと、がんばる中小企業の自助努力と私たちの応援をもって地域全体で中小企業の振興を促進することにより本市の活力の向上と持続的な発展を目指すことを強く決意し、ここにこの条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、地域経済において果たす中小企業の役割の重要性に鑑み、市の中小企業の振興に関する基本理念及び基本的な事項を明らかにすることにより、中小企業の振興に関する施策(以下「中小企業振興施策」という。)を総合的に推進し、もって地域経済の健全な発展と市民生活の向上を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 中小企業 中小企業基本法(昭和38年法律第154号。以下「法」という。)第2条第1項各号に規定する中小企業者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(2) 小規模企業 中小企業のうち、法第2条第5項に規定する小規模企業者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(3) 経済団体 商工会議所法(昭和28年法律第143号)の規定により設立された商工会議所、商工会法(昭和35年法律第89号)の規定により設立された商工会その他中小企業に関する団体のうち、市内で活動するものをいう。

(4) 大企業 中小企業以外の者(金融機関を除く。)であって、市内に事務所又は事業所を設けて事業を営むものをいう。

(5) 教育機関等 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する小学校、中学校、高等学校、大学その他職業に必要な能力の育成を行う機関のうち、市内で活動するものをいう。

(基本理念)

第3条 中小企業の振興は、次に掲げる事項を基本理念として行わなければならない。

(1) 中小企業の振興は、創意工夫による競争力の向上や自主的な努力による経営力の向上など中小企業の主体的なやる気やがんばりを尊重して推進されること。

(2) 中小企業の振興は、中小企業の成長を通じて地域社会がより豊かになること及び地域経済が長期にわたって外部環境の変化に適応できるようになることを旨として行われること。

(3) 中小企業の振興は、がんばる中小企業が、地域の雇用確保、多様な人材の育成、人材の活躍の場の創出などを通じて地域経済を活性化し、地域の発展を支えているとの認識の下に行われること。

(4) 中小企業の振興は、がんばる中小企業の持続的な発展に向け、創業から発達に至るまでの全ての段階において行われること。

(5) 中小企業の振興は、中小企業、大企業、経済団体、金融機関、教育機関等、市民及び市が相互に連携して推進されること。

(基本方針)

第4条 前条の基本理念に基づく中小企業の振興に関する基本的な方針は次のとおりとする。

(1) 中小企業の経営の安定及び革新を図ること。

(2) 中小企業の新たな事業展開の促進、市場の開拓、情報通信技術等を活用した生産性の向上及び創業の促進を図ること。

(3) 中小企業の人材の確保、育成及び定着並びに円滑な事業承継を図ること。

(4) 中小企業への資金供給の円滑化を促進すること。

(5) 中小企業に関する調査研究、情報の収集及び円滑な提供並びに中小企業の情報発信を図ること。

(6) 中小企業における労働環境及び勤労者福祉の向上を図ること。

(7) 小規模企業の経営の状況に応じた取組の推進を図ること。

(市の責務)

第5条 市は、社会経済状況の変化に応じて計画的かつ効果的な中小企業振興施策を定め、実施するとともに、その実施に当たっては次の事項に留意するものとする。

(1) 中小企業振興施策の実施に要する体制の整備及び財政上の措置に努めること。

(2) 市が実施する工事の発注、物品及び役務の調達等において、中小企業の受注機会の増大に努めること。

(3) 国、県その他機関との連携を強化するとともに、必要に応じて国及び県の施策の充実及び改善を要請すること。

(中小企業の責務)

第6条 中小企業は、経営基盤の強化、技術の向上、人材の育成、従業員の福利厚生の充実など、持続的な発展に向けた取組に自主的かつ積極的な努力を払うとともに、地域社会を構成する重要な一員としての社会的責任を自覚し、地域社会との調和に努めるものとする。

(経済団体の役割及び責務)

第7条 経済団体は、中小企業の自助努力及び創意工夫による事業活動を積極的に支援するよう努めるものとする。

2 経済団体は、経済的なつながり等を鑑みる中で必要な連携を図るよう努めるものとする。

3 経済団体のうち商工会議所及び商工会は、第1項に規定する支援の実施においては特に主体的に実施するものとする。

(金融機関の役割)

第8条 金融機関は、中小企業に適した円滑な資金供給、経営相談、販売先の開拓、有用な情報の提供その他の方法により中小企業の成長発展に資する支援を行うよう努めるものとする。

(大企業の役割)

第9条 大企業は、自らの事業活動を行う上での中小企業の重要性を認識し、中小企業との連携に努めるものとする。

(教育機関等の役割)

第10条 教育機関等は、望ましい勤労観、職業観などを育むキャリア教育の推進等教育研究活動を通じて、次世代を担う人材の育成を促進するよう努めるものとする。

2 教育機関等は、中小企業が行う研究及び人材育成のための協力その他必要な協力を行うよう努めるものとする。

(市民の理解と協力)

第11条 市民は、中小企業の振興が本市経済の発展及び市民生活の向上に果たす役割の重要性を理解し、中小企業の振興に協力するよう努めるものとする。

2 市民は、消費者として市内において生産され、製造され、又は加工される物品及び市内で提供されるサービスを利用するよう努めるものとする。

(推進会議)

第12条 市は、中小企業振興施策を推進するにあたり、中小企業振興推進会議(以下「推進会議」という。)を設置するものとする。

2 推進会議の委員は、次に掲げる者で構成する。

(1) 学識経験者

(2) 中小企業を代表する者

(3) 経済団体を代表する者

(4) 金融機関を代表する者

(5) 市職員

(6) その他市長が必要と認める者

3 推進会議は、地域の経済情報や中小企業の情報についての情報交換を図るとともに、各機関で実施されている支援内容を共有し、その内容や今後の方策についての協議検討を行う。

4 推進会議の運営に関し、必要な事項は推進会議で定める。

(委任)

第13条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、公布の日から施行する。

藤枝市地域経済を支える「がんばる中小企業」振興基本条例

平成28年12月26日 条例第36号

(平成28年12月26日施行)