第五期 所信表明

はじめに

このたびの市長選挙におきまして、多くの市民の皆様から力強い後押しをいただき、引き続き、5期目の市政経営にあたらせていただくこととなりました。
私の市政への思い、そして決意を市民の皆様に直接訴え、引き続き市政の舵取りを担わせていただきましたことは、これまでの成果をご評価いただくとともに、今後のさらなる前進、新たな展開にご期待いただいていることの現れと受け止めております。
今回、改めて市内を隈なく廻り、多くの市民の皆様と直接お話しする中で、多くの気付きがありました。このような切なる声、市政への期待、また叱咤激励を真摯に受け止め、その責任の重さを力にして、必ずや市民の皆様を幸せに導き、この藤枝を持続可能なまちとして未来に繋げようと、決意を新たにいたしました。
今から16年前の就任当時、本市は財政不安や病院の経営状況、周辺との合併協議の結末などに加え、いわゆるリーマンショックが地域経済や市民の皆様の暮らしにも影響を及ぼし、まち全体が大きな閉塞感の中にありました。
私はこの状況を打破し、藤枝市を「元気なまち」に変えようと、職員とともに自ら先駆者となって様々な取組にチャレンジし、その結果、多くの人や企業に選ばれ、中心市街地の活性化など右肩上がりの好循環を生み出してまいりました。
しかしながら、この数年は加速度的に進む少子高齢化、人口減少に加え、国際的な紛争や物価の高騰、そして頻発化する自然災害、さらには長きに亘ったコロナ禍などが社会環境を一変させており、極めて不確実で不安定な世の中にあります。
市民の皆様の日々の暮らしや営みにおきましても、先行きへの不安の高まりを、私自身、実感しているところであります。折しも本市は、このような大きな転換期の中で市制施行70周年という節目を迎えました。
私は、再びこうした閉塞感を切り拓き、もう一度、原点に立ち返って「元気なまち」を築き直す。まさに「将来への再出発」という強い決意と覚悟で、「誰もが安心し健康に暮らし、希望を持てるまち」、そして「将来に向けて力強く成長し、持続するまち」の実現に向け、職員とともに全身全霊を尽くして邁進してまいります。

5期目の重点方針
1.広域連携の強化

現在、国全体で急激に人口減少が進む中において、限られた経済投資を呼び込むため、広域交通インフラを軸とした地域間競争が激しさを増しております。
こうした中で、本市の持続力を高めるためには、地域経済の核となる静岡市なども含めた大きな枠組みにより、圏域全体の経済力・吸引力を高めることが不可欠であります。
私が特に注力したいのは、高度人材の育成です。民間投資を呼び込むためには、人材力こそが生命線です。幸いにもこの圏域には、地元の静岡産業大学はもとより静岡大学や県立大学をはじめ有力な大学が数多くあり、また静岡市や本市には、県内唯一の理工系大学である静岡理工科大学の拠点もあります。
この恵まれた環境、力を結集し、一体となって高度人材を育成するプラットフォームを確立して、優秀な人材を求めて県内外から企業が集まり、圏域全体の経済力も高まる好循環を生み出してまいりたいと考えております。
こうした中で、本市が中核を成す都市の一つとしてさらに存在感を高め、地域全体を牽引し、ヒト・モノを呼び込めるよう、新たな都市拠点形成に向けた土地利用も戦略的に進めてまいります。

2.強みを活かした新たな成長戦略の確立

先述した通り、まちの活力、持続力の基盤は、何より経済の力そのものであります。そこで、本市経済の中心を担っていただいている中小企業や農業の持続力を高めるため、これらを牽引する、核となる新たな成長産業づくりをスタートさせます。
本市の強み、資源であり、世界的な成長分野でもあります「食と農」「健康・医療」を結び付けて、本市を“予防医療のメッカ”とし、地域に根付いた産業を確立し、中小企業や農業と連動させてまいりたいと考えております。
既にこうした動きに呼応して、革新的な技術やノウハウを有するスタートアップや人材が本市に集まってきておりますので、連携を進めて市内産業の第二の成長に繋げてまいります。
さらに、本市のもう一つの資源でありますサッカーをはじめとする「スポーツ」とも連動させた「藤枝シティ・トレセン構想」も本格的に始動します。市内全域をフィールドに、国内外から様々なスポーツイベントや合宿、ツーリズムなどを呼び込む滞在型のまちづくりにより、関係人口や交流人口を拡大し、地域経済への波及を進めてまいります。

3.誰ひとり取り残さない支援

少子高齢化が進展する中で、特に子ども、子育ての支援、そして高齢者の支援を両輪で、重点的に進めてまいります。
次代を担う子どもたちは、市民共有の財産であり、将来への希望そのものです。一方で、様々な境遇から困難を抱え、社会から孤立してしまう子どもや家庭も増えております。
本市ではこの4月、「こども基本条例」を施行し、あらゆる面から子どもに優しいまちづくりを進めるため、具体の「こども計画」の策定に着手しておりますが、まずは子どもや若者の声を聴く仕組みを作り、その声に寄り添って、大切な命と人格、そして健やかな成長を社会全体で守り、支える環境づくりを進めてまいります。
少子化対策におきましては、何より若い世代が安心できる環境づくりが必要です。そこで、結婚や出産・育児の希望が本市で叶うよう、妊娠や出産を支える独自の仕組みを検討してまいります。さらに基盤となる経済的な安定に向けて、先ほど述べました市内産業の革新による新たな雇用の創出や賃金の向上、保育環境の充実や放課後の居場所づくりなど、安心して働き続けられる環境づくりも進めてまいります。
私は、少子化の対策は、高齢者の皆様が元気な環境あってのことと考えておりますが、現在、3人に1人が65歳以上となる中で、人生経験豊かな皆様が、ややもすれば生きづらい社会になっているのではないかと大変危惧しております。このことは心身の健康にも影響し、その社会的な損失は計り知れません。
そこで、高齢者の皆様の社会とのつながりの確保や、安心できる日常のサービスを住み慣れた地域において提供する、総合的な生活サポートの仕組みを官民連携で確立し、いつまでも元気に“生きやすい”環境づくりを進めてまいります。
また、間もなく7人に1人が認知症となり、仕事と介護の両立が困難になるなど、国全体で9兆円の経済的損失が生まれるといわれております。本市では本年度、いち早く「認知症条例」を施行しましたが、早速、認知症のご本人は勿論、そのご家族を社会全体で支える仕組みづくりに着手し、安心と活躍に繋げてまいります。

4.若者、女性が輝き活躍できる環境づくり

私は、本市がこれまで築き上げてきたまちづくりや取組をベースに、若い世代、そして女性が、様々な領域で希望を抱いてチャレンジでき、そして自己実現できるまちへとステップアップさせたいと強く考えております。
ここまでに述べさせていただいた、力強い地域経済圏の確立や、藤枝から世界に繋げる新たな産業の創造とスタートアップなどの誘導、そして子どもや子育ての支援も、すべてそのフィールドとしての可能性や選択肢を広げるための仕掛けといっても過言ではありません。
若者や女性が本市に魅力と価値を見出して各所から、様々なフィールドで活躍する。このことこそが、本市の持続的発展の大きな原動力となります。
そこで、まずはまち自体の魅力を高めるため、これまで進めてきた中心市街地や旧市街地、中山間地域のまちづくりをさらに加速させます。
中心市街地では、核となる「BiVi藤枝」を、官民連携で新たな価値を生み出す拠点としてリニューアルするとともに、駅前地区でも市街地再開発事業を順次着工させ、ビジネスや交流の拠点づくりを進めてまいります。
本市のもう一つの核を成す旧市街地も、情緒あふれるまち歩きの空間づくりや、音楽など新たな文化を育む拠点づくりに着手し、人々が行き交い、様々な活動が沸き上がる場へと姿を変えてまいります。
さらに中山間地域でも、創作活動や体験、地域の食を提供する「陶芸村」の中核拠点を開設するとともに、新たに朝比奈地区でも玉露や歴史文化を活かした観光まちづくりをスタートするなど、多様な活躍のフィールドづくりを進めてまいります。
また、若い世代の将来への可能性を広げるため、小中学校からの英語やICTなど社会実践力のある教育、また論理的思考を養い、課題解決力を高める教育の強化に加え、藤枝市民大学を「専門的人材養成コース」の設置によりレベルアップし、“教育に魅力がある都市”づくりも進めてまいります。
これらに加えて、安心して活躍できる基盤として、仕事と家庭が両立できる仕組み、希望する仕事やビジネスとマッチングできる仕組みの確立を検討するとともに、土地利用の弾力化にも着手し、手が届く住まいの提供も進めてまいります。

結びに

目下の極めて不安定で不確実な社会の中で、本市が将来に亘たり自立し、そして持続するための、市政の新たなステージが始まります。
私は、そのための全ての基礎となるのは「市民目線」、そして「成長」であると考えます。
急激な社会構造の変化は、あらゆる部分において複合化・複雑化した課題を生み出し、市民の皆様はそれぞれの境遇で様々な不安を抱えていることと思います。この不安を安心に、そして希望へと変えていけるよう、改めて市民の目線に立ち、施策をわかりやすく示し、そしてしっかりと声を聴いて、一番必要とされる“支え”を一つずつ整えてまいります。
また、社会経済システムが過渡期にある中、これまでの延長線上の取組では、自治体ももはや生き残ってはいけません。変革なくして成長なし、成長なくして将来はない、という強い責任と覚悟をもって、新たなチャレンジも進めてまいります。
改めまして、我々行政の使命は、市民の皆様が日々安全・安心に健康に暮らし、将来に希望が持てるまちを創ること、すなわち、市民の皆様の「幸せ」を叶えることであります。
藤枝を「元気なまち」にすると皆様にお誓いし、市政の舵取りを担ってから早16年。今こそまさに正念場です。
私は、市民の皆様の「幸せ」こそが、本市の明るい未来への力であり、この大きく変革する社会を切り拓く力であると考えますので、私の座右の銘であります「一以貫之」の精神のもと、職員とともに全身全霊で市民の皆様の「幸せ」を実現してまいります。


以上、これから4年間の市政を推進するにあたり、所信の一端を申し上げました。
市民の皆様の一層のご支援とご協力をお願い申し上げます。

令和6年6月28日
藤枝市長 北村 正平

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更新日:2024年06月28日